大判例

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神戸地方裁判所 昭和27年(行)3号 判決

原告 佐伯成道

被告 姫路県税事務所長

一、主  文

原告の請求は、これを棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

二、事  実

原告は、被告が原告に対しなした税額二八、〇〇〇円の昭和二十六年度特別所得税の賦課処分は、これを取消す、訴訟費用は、被告の負担とする、との判決を求め、その請求の原因として、

一、被告は、原告をもつて、業務所乃至は事務所を設けて個人が行う公証人であるとして、地方税法第七七六条を適用し、昭和二十六年八月十五日附で、原告に対し、同年度の特別所得税として、金二八、〇〇〇円を賦課する旨の徴税令書を送達してきた。

二、しかしながら、右賦課処分は、違法である。すなはち、原告は、なるほど、昭和二十四年四月十二日以降、役場を設けて公証人として職務を行つているが、公証人は、法務総裁の任命により公務に従事する公務員であつて、公証人の業務は、国のそれに他ならない。従つて、原告は、個人の行う公証人ではないから、地方税法第七七六条に規定する特別所得税の納税義務者ではない。

三、なお、原告は、本件賦課処分を不服として、被告に対して、適法期間内に異議の申立をなしたが、同年九月十九日附で棄却されその通知書が同月二十一日原告に到達したものである。

四、そこで、前記賦課処分の取消を求めるため、本訴に及んだ次第である。

と述べた。

被告指定代理人は、主文第一、二項同旨の判決を求め、答弁として、

一、原告主張事実は、全部これを認める。

二、しかしながら、原告に対する本件特別所得税賦課処分には、何等の疵瑕もない。すなわち、地方税法第七七六条には、特別所得税の納税義務者として、公証人業を行う者を明記し、同条第一項に云う「個人の行う」とは、同法全体の構成からすれば、法人を除外する趣旨であり、公証人は、広義では公務員であるとは云え、手数料を嘱託者より受領し、直ちにこれを自己の収入となし、その固定的でない点等、他の一般公務員と異り、経済的見地より、税法上「個人の行う業務」として把握しているに過ぎない。すなわち、地方税法は、公証人に対して、特別所得税を賦課する趣旨である。しかして、公証人たる原告の昭和二十五年中の業務所得が金三五〇、〇〇〇円であつたから、地方税法第七七七条及び第七七九条を適用して、本件賦課処分をなしたものである。従つて、原告の請求は、失当である、

と述べた。

三、理  由

一、被告が原告をもつて、業務所乃至は事業所を設けて個人が行う公証人であるとして、地方税法第七七六条を適用し、昭和二十六年八月十五日附で、原告に対し、同年度の特別所得税として、金二八、〇〇〇円を賦課する旨の徴税令書を送達したこと及び原告が右処分に対し適法期間内に異議の申立をしたが同年九月一九日附で棄却され、その通知書が同月二十一日原告に到達したことは、当事者間に争がない。

二、しかして、原告が昭和二十四年四月十二日以降公証人をしていることは、当事者間に争がないところ、原告は、地方税法第七七六条第一項、及び第三項に規定する「個人が行う公証人業」の表現を捉えて云々するのであるが、同法第七四〇条、第七四一条と対比すれば、道府県の普通税として、昭和二十五、二十六年度に限り、事業税、特別所得税が設けられ、事業税は、法人の行う事業、及び同法第七四一条に規定された個人が行う第一、二種事業を対象とし、他方、特別所得税は、その対象として、同法第七七六条に第一、二種業務を明定した上、事業税の納税義務者たる法人を除く趣旨で、これに「個人が行うもの」との制限を付したものであつて、その「個人」と云うは、もとより、法人を除外する趣旨に過ぎないものであると解するのが、相当である。このことは、旧地方税法(昭和二十三年法律第一一〇号)第七一条に、特別所得税の納税義務者として、「第一種業務、及び第二種業務(法人の行うものを除く)」と規定して、公証人をその納税義務者としていた沿革に徴しても、これを窺うに十分である。しかして、公証人が、法務総裁の任命にかゝり、その担当するところが公務であることは、原告所論の通りであるが、経済的には、その手数料等の収入は、国庫に非ずして、個人たる公証人に帰属するものであつて、税法上、その利益の帰するところに課税するとの観点より、公証人たる個人に課税する趣旨で、公証人を個人の業務とみ、納税義務者として規定することは、その表現において、稍明確を失するとは云え、強ちこれを不当視するわけにはゆくまい。同法が、公証人に特別所得税を課する趣旨であることは、到底これを否定し得る筋合ではない。しかして、公証人たる原告の昭和二十五年中における業務の所得が金三五〇、〇〇〇円であることは、原告において明かに争はないから、これを自白したものと見做すべく、この事実に地方税法第七七七条、及び第七七九条を適用としてなした本件賦課処分は、全く適法である。

三、されば、原告の請求は、これを失当として棄却すべく、訴訟費用の負担について、民事訴訟法第八九条を適用して、主文の通り判決する。

(裁判官 古川静夫 西村哲夫 保津寛)

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